通所介護(デイサービス)において、利用者と共に施設の外へ出る「散歩」や「外出」の機会を設けたいと考える場面は少なくありません。しかし、通所介護サービスは原則として事業所内で提供されるべきものであり、無条件に屋外活動を実施することはできません。
今回は、厚生労働省の通知および各県の運用解釈をもとに、「通所介護での屋外でのサービス提供」が可能となる条件について、詳しく解説します。
通所介護で屋外活動を行うための基本的な考え方
原則:サービス提供は事業所内で
通所介護は、施設内での介護・機能訓練等を行うサービスです。そのため、外出や屋外での活動は原則禁止とされています。
例外:次の条件を満たす場合に限り可能
以下の2点を満たす場合に限って、屋外でのサービス提供が認められます(H12老企25号 第3の六 3(2))。
イ)あらかじめ通所介護計画に位置づけられていること
ロ)効果的な機能訓練等のサービスが提供できること
外出サービスの実施要件と県の解釈
以下のように、事前準備と根拠資料の整備が重要です。
必要な書類① 通所介護計画書
計画書には、以下の要素を盛り込む必要があります。
- 利用者の心身の状況・希望・生活環境に基づいた機能訓練の目標
- その目標を達成するために、なぜ屋外でのサービスが必要か
- 訪問場所の妥当性と、そこで期待される具体的な効果
※年間計画である必要はありませんが、利用者ごとに記載が必要です。
また、事業所では「なぜその外出先でなければならないのか」を具体的かつ合理的に説明できるようにしておくことが求められます。
外出時の注意点と制限事項
1. 送迎の取り扱いに注意
- 送迎車で自宅から外出先へ直行直帰は不可
- 外出前には事業所で健康チェックを行い、外出可否を判断
2. 保険適用の対象外となるケース
以下のような外出は原則として介護保険外サービス扱いとなります。
- 機能訓練と関係のない行事目的の外出
- 日帰り旅行のみを目的とした外出
- 通常の利用者以外も対象とするイベント的外出
※事業者が「保険対象」と考える外出がある場合は、事前に保険者(市町村)と個別協議を行い、記録を残すことが必要です。
3. 法令遵守(道路運送法)
通所介護の送迎は「自家用有償輸送」にあたるため、送迎車で事業所・居宅以外への送迎を行う場合は、運輸局への確認が必要です。
安全管理と人員配置について
損害賠償保険の加入
屋外サービス中に事故が起きた場合に備えて、適切な損害賠償保険に加入しておくことが望まれます。
人員基準の遵守
- 外出グループと居残りグループを合わせて人員基準を満たしていること
- 外出先で目が届かないような人手不足にならないよう配慮すること
三重県長寿介護課の通所介護における外出の扱いの例
三重県では、通所介護で屋外サービスを実施する際、厚生労働省の通知に準じて次の2点を独自の追加条件として重視しています。
三重県の追加条件
屋外でのサービスが頻回でないこと
→「頻回」の定義は一律ではなく、事例ごとに判断。
屋内サービス希望者にも適切な対応がされていること
→外出サービスの時間帯にも屋内サービスを継続し、両者の人員配置を適正に行う必要あり。
さらに、介護職員・看護職員の配置についても、外出グループと屋内グループを別単位として扱うことが原則。外出人数や内容に応じて、可能な範囲で看護職員の同行も求められています。
【事例別】外出の可否と三重県の考え方
① 旅行・ツアー形式(日帰りの花見・温泉・買い物など)
原則:介護保険サービスの対象外
ただし、機能訓練等の目的と効果が明確であり、頻回でなければ保険内サービスとして認められる可能性もある。
必ず個別のマネジメントと目的の明示が必要。
② 地域行事への参加(祭り、保育園のイベントなど)
通所介護の一環として、機能訓練の目的と効果があれば原則可能
行事が至近距離で行われること、また地域とのつながりや参加が訓練になることが条件。
③ 機能訓練としての買い物(近隣の店舗)
機能訓練を兼ねた外出であれば保険適用の可能性あり。
- 判断基準としては、個別機能訓練加算(Ⅱ)等の算定状況が参考となる。
- 加算を算定していなくても、目標や評価を伴った計画的な訓練であれば準じて扱う。
④ 近所の散歩(機能訓練目的)
個別機能訓練加算(Ⅰ)や(Ⅱ)の算定があるかがポイント。
健康状態や筋力維持を目的とした散歩で、訓練内容として計画されていれば実施可能。
⑤ 同一建物内・隣接施設の利用(交流室、喫茶、浴室など)
通所介護事業所の指定区画外であっても、併設施設なら基本的に可能。
- 「身近な社会資源の活用」として厚労省通知にも該当。
- ただし、例外的な取扱いであるため、利用者の希望や必要性、マネジメントの適切性が前提。
⑥ 敷地内での活動(庭いじり、散歩、植物栽培など)
外出には該当せず、通常の通所介護サービス内で実施可能。
特別な計画書や加算要件は不要。
三重県の方針で重視されるポイント
- 目的が「機能訓練等」であること
- 頻回でないこと
- 利用者一人ひとりの状況に応じた個別計画の作成
- 屋内希望者にも適切なサービスを提供できる体制
- 外出先の選定理由や効果の合理的説明
外出サービスの導入には、適切な記録と説明責任が求められます。保険者によって解釈が異なる場合もあるため、実施前には市町等の保険者に相談することが推奨されています。
参考:通所介護における外出の扱いについて 平成28年8月 三重県長寿介護課
まとめ
通所介護において、外出や散歩を伴うサービスは、あくまで例外的な取り扱いです。
実施にあたっては…
- 事前に詳細な通所介護計画の作成
- 外出の必要性と効果の明記
- 保険適用の範囲内かどうかの確認
- 安全・人員体制の確保
- 関連法令の遵守と保険者との協議
を確実に行う必要があります。
利用者にとって有意義な屋外機能訓練の機会を提供するには、計画性と法的理解、そして安全への配慮が不可欠です。