2024年版 個別機能訓練計画書の目標例(心身機能・活動・参加)

2024年版 個別機能訓練計画書の目標例(心身機能・活動・参加)

通所介護の個別機能訓練計画書の長期目標例について、心身機能・活動・参加の要素に分けて設定するとどんな文例になるか紹介します。2021年4月からの個別機能訓練計画書では、心身機能・活動・参加をバランスよく含めた機能訓練の目標設定を行うことが求められますので、まずは厚生労働省が示した機能訓練計画のニーズ把握から目標設定までの流れを確認した後に長期目標の具体例を心身機能・活動・参加の要素に分け、個別機能訓練加算(Ⅱ)のLIFEへの情報提出に必要なICFでの分類(コード分類)も考慮して紹介します。

個別機能訓練計画書の作成方法

個別機能訓練加算算定にあたっての居宅訪問・課題整理・目標設定・個別機能訓練計画の作成、長期目標・短期目標の設定方法について詳しくはこちらの記事で紹介しています。

2024年~ 通所介護の個別機能訓練加算「個別機能訓練計画書」の書き方・記入例(様式3-3)

ニーズ把握(評価)・課題整理

利用者の社会参加状況やニーズ・日常生活や社会生活等における役割の把握、心身の状態の確認機能訓練指導員等は、個別機能訓練の目標を設定するにあたり、以下の①~④により、利用者のニーズ・日常生活や社会生活等における役割の把握及び心身の状態の確認を行う。

興味・関心チェックシート

興味・関心チェックシート:利用者の日常生活や社会生活等について、現在行っていることや今後行いたいこと(ニーズ・日常生活や社会生活等における役割)を把握。利用者のニーズ・日常生活や社会生活等における役割に対する家族の希望を把握する。

別紙様式3-1「興味・関心チェックシート」 通所介護の個別機能訓練加算

生活機能チェックシート

② 生活機能チェックシート:利用者の居宅での生活状況(ADL、IADL等)を居宅訪問の上で確認。

ⅰ 利用者の居宅の環境(居宅での生活において使用している福祉用具・補助具等を含む)を確認する。

ⅱ ADL、IADL項目について、居宅の環境下での自立レベルや実施するにあたっての課題を把握する。

別紙様式3-2の「生活機能チェックシート」通所介護の個別機能訓練加算

必要に応じて医師又は歯科医師、介護支援専門員を通じて情報収集

必要に応じて医師又は歯科医師から、これまでの利用者に対する病名、治療経過、合併疾患、機能訓練実施上の留意事項についての情報を得る。直接医師又は歯科医師から情報が得られない場合は、介護支援専門員を通じて情報収集を図ること。

居宅サービス計画(ケアプラン)の情報

介護支援専門員から、居宅サービス計画(ケアプラン)に記載された利用者本人や家族の意向、総合的な支援方針、解決すべき課題、長期目標、短期目標、サービス内容などについて情報を得ること。

把握した利用者のニーズ・日常生活や社会生活等における役割及び心身の状態に応じ、機能訓練指導員等が多職種協働で個別機能訓練計画を作成する。

個別機能訓練目標の設定

把握した利用者のニーズ・日常生活や社会生活等における役割及び心身の状態に応じ、機能訓練指導員等が協働し、利用者又は家族の意向及び利用者を担当する介護支援専門員の意見も踏まえつつ、個別機能訓練目標を設定する。なお、目標設定にあたっては、当該利用者の意欲の向上に繋がるよう、長期目標・短期目標のように段階的な目標設定をするなど、可能な限り具体的かつ分かりやすい目標とすること。

長期目標の設定と目標例

長期目標は生活機能の構成要素である以下a~cをバランスよく含めて設定することが求められる。

a 体の働きや精神の働きである「心身機能」

b ADL・家事・職業能力や屋外歩行といった生活行為全般である「活動」

c 家庭や社会で役割を果たすことである「参加」

・ 具体的には、利用者が住み慣れた地域で居宅において可能な限り自立して暮らし続けることができるよう、単に座る・立つ・歩くといった身体機能の向上を目指すことのみを目標とするのではなく、居宅における生活行為(トイレに行く、自宅の風呂に一人で入る、料理を作る、掃除・洗濯をする等)や地域における社会的関係の維持に関する行為(商店街に買い物に行く、囲碁教室に行く、孫とメールの交換をする、インターネットで手続きをする等)等、具体的な生活上の行為の達成を含めた目標とすること。

短期目標の設定と目標例

長期目標を設定した後は、目標を達成するために必要な行為ごとに細分化し、短期目標として整理する。

(例)長期目標が「スーパーマーケットに食材を買いに行く」の場合必要な行為

  • 買いたい物を書き記したリストを作る
  • 買い物量を想定し、マイバッグを用意する
  • スーパーマーケットまでの道順を確認する
  • スーパーマーケットまで歩いて行く
  • スーパーマーケットの入り口で買い物かごを持つ
  • スーパーマーケットの中でリストにある食材を見つける
  • 食材を買い物かごに入れる
  • レジで支払いをする
  • 買った品物を袋に入れる
  • 買った品物を入れた袋を持って、自宅まで歩いて帰る
厚生労働省の示した例は以上のような形になりますが、具体的に心身機能・活動・参加に分類して長期目標短期目標を立てるとしたらどのようになるかを以下で例を挙げて紹介します。

「心身機能」に関する機能訓練計画書の目標例

精神機能

  • 覚醒した状態でいられる時間を伸ばす
  • 周囲からの刺激に影響されずに取り組める
  • 物忘れに対してメモを取るなどする
  • 感情の変動を自制できるようにする

感覚機能と痛み

  • 疲労感を自覚できるようにする
  • 左側に注意が向きにくいことを意識する
  • 右膝の痛みを緩和する

身体機能・構造

  • 長い時間動くための耐久性を向上する
  • 尿漏れを予防する
  • 足の関節可動域を向上させ動きやすくする
  • 下肢の筋力を向上させる
  • 手術後の皮膚の癒着を防げるようにする

コミュニケーション

  • 話をしっかりと聞き理解できるようにする
  • 身振りや筆談などで意思表示・自己表現できるようにする
  • 電話やメールの活用ができる

「活動(ADL)」に関する機能訓練計画書の目標例

姿勢の変換

  • 椅子から立ち上がりができる
  • 床にしゃがみこむ動きができる
  • ベッドから起き上がることができる

姿勢保持

  • 椅子に10分以上座っていることができる
  • トイレで下衣を上げる間立ち上がった姿勢を保つことができる

移乗

  • ベッドから車椅子へ乗り移ることができる
  • 車椅子からトイレへ移ることができる
  • 車椅子から車の助手席へ乗ることができる

物の運搬・移動・操作

  • 背負い歩くことができる
  • 自転車のペダルを漕ぐことができる
  • 薬箱から薬を取り出し口に運ぶことができる
  • 携帯電話で相手に電話をかけるボタンを押すことができる
  • 洗濯機に洗濯物を入れることができる

歩行や移動

  • 自宅のトイレまで移動することができる
  • 近くのコンビニまで歩いて行くことができる
  • 歩行器を使って息子の家まで移動することができる

交通手段の利用

  • 自転車に乗り移動することができる
  • タクシーを使い通院することができる

入浴

  • 全身を洗うことができる
  • 顔や髪の毛を洗い、拭き取り乾かすことができる

整容

  • 足の爪を切ることができる
  • 足の指の間を石鹸で洗うことができる
  • 義歯を洗浄し、口の中を清潔に保つことができる
  • 自分で髭を剃ることができる

トイレ動作

  • トイレに行きたくなった時に自分で行くことができる
  • トイレで排泄をした後に拭き取ることができる

更衣

  • 気温や気候に合わせてちょうど良い衣類を選び着替えることができる
  • 上着に手と首を通し着ることができる
  • ズボンを自分で脱ぎ着替えることができる
  • 靴と靴下の着脱を自分で行える

食事

  • スプーンを使って食事を口に運び食べることができる

健康管理

  • 自分で血圧を測り記録することができる
  • 医師・薬剤師からの指示通り内服を管理できる
  • 窓を開ける、換気扇・エアコンなどで室内を快適に保てる

買物(活動に分類される場合も参加に分類される場合もある)

  • スーパーまで行き買い物をすることができる
  • 生協に必要なものを注文することができる
  • 2人分の食材を考えて買ってくることができる

「参加」に関する機能訓練計画書の目標例

料理(活動に分類される場合も参加に分類される場合もある)

  • 台所で料理を安全に行うことができる
  • 配食されたお弁当を電子レンジで温めることができる

家事(活動に分類される場合も参加に分類される場合もある)

  • 家の中の掃除機かけができる
  • ゴミをまとめてゴミ捨て場まで持っていくことができる
  • 洗濯を行える

家庭用品の管理

  • 自宅の玄関の鍵の開け閉めができる
  • ペットの餌やり、糞尿の始末ができる
  • 歩行器を玄関にしまうことができる

対人関係

  • 同じ老人ホームに住んでいる人と交流できる
  • 集会所で行われる集会に参加することができる
  • 隣の家に回覧板を持っていくことができる
  • 近所の子供が登下校する時に軒先で見守る

趣味や社会活動

  • 俳句のコンクールに応募する
  • 図書館で本を借りて読書する

ICF(心身機能・活動・参加)で分類してバランスよく目標を立てましょう!

2021年からの個別機能訓練加算(Ⅰ)イ・個別機能訓練加算(Ⅰ)ロでは、長期目標は生活機能の構成要素である心身機能・活動・参加をバランスよく含めて設定することが求められます。この記事で紹介した目標例を参考に一人一人の生活状況やニーズに合わせた機能訓練の目標を設定して、意欲的に取り組んでもらえるようにしましょう。

個別機能訓練加算(Ⅱ)を取得する場合はLIFEにICFコードで目標情報を提出

科学的介護情報システム「LIFE」への情報提出について

厚生労働省の科学的介護情報システム「LIFE」では、LIFEにログインして直接情報を入力していくか、CSVファイルのアップロードを行い提出するかのいずれかの方法があります。

個別機能訓練加算(Ⅱ)の長期目標・短期目標をICFコードで提出

LIFEへの情報提出では、個別機能訓練加算(Ⅱ)を算定する場合に個別機能訓練計画書の長期目標と短期目標の項目を提出する際にICFコードで提出します。

この記事を書いた人

管理人

機能訓練指導員ネットワーク代表、介護保険分野の機能訓練を解説しています。