2024年から通所介護の「個別機能訓練加算」の算定要件は大筋は2021年の改定から変更はありません。通所介護施設での個別機能訓練加算は、利用者の生活機能の維持・向上を目指すための具体的な取り組みが必要となります。本記事では、個別機能訓練加算の算定要件について詳しく解説し、機能訓練指導員をはじめとする職員が共同してどのように対応すべきかを紹介します。
通所介護・地域密着型通所介護の「個別機能訓練加算」の目的
通所介護や地域密着型通所介護で個別機能訓練加算を算定する利用者は、住み慣れた地域で可能な限り自立して暮らし続けることを目指し、生活機能の維持・向上を図るために個別機能訓練を実施する必要があります。個別機能訓練加算の算定要件は、令和三年度(2021年)の介護報酬改定で見直され、利用者の自立支援をさらに促進するために、これまでの加算取得状況や訓練の実施状況を考慮し、訓練の目的や実施体制、人員配置が再評価されました。
加算算定にあたっての評価・目標設定
利用者のニーズと日常生活の把握
個別機能訓練の目標を設定するにあたり、まず利用者の日常生活や社会生活について現在行っていること、または今後行いたいことを把握します。これには、別紙様式3-1の「興味・関心チェックシート」を活用します。また、利用者のニーズや役割に対する家族の希望も把握します。
居宅での生活状況の確認
利用者の居宅での生活状況(ADL、IADL等)を訪問して確認します。具体的には、別紙様式3-2の「生活機能チェックシート」を使用して以下を行います。
- 居宅の環境(福祉用具・補助具等を含む)を確認
- 居宅の環境下での自立レベルや実施にあたっての課題を把握
医師や歯科医師からの情報収集
必要に応じて、医師または歯科医師から、利用者の病名、治療経過、合併疾患、個別機能訓練実施上の留意事項についての情報を得ます。直接情報が得られない場合は、介護支援専門員を通じて情報収集を図ります。
介護支援専門員からの情報収集
介護支援専門員からは、居宅サービス計画に記載された利用者本人や家族の意向、総合的な支援方針、解決すべき課題、長期目標、短期目標、サービス内容などについて情報を得ます。
多職種協働での個別機能訓練計画の作成
機能訓練指導員は、把握した利用者のニーズや日常生活、社会生活における役割、および心身の状態に基づいて、多職種と協力して個別機能訓練計画を作成します。この際、必要に応じて、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、歯科衛生士、管理栄養士など、他の専門職からも助言を受けることが望ましいです。
個別機能訓練計画書の作成
個別機能訓練計画書は、別紙様式3-3を参考に作成します。この計画書は、居宅サービス計画、通所介護計画、または地域密着型通所介護計画と整合性を保つことが重要です。これにより、利用者が一貫したケアを受けられるようにします。
個別機能訓練目標の設定
長期目標の設定
長期目標は、利用者の生活機能をバランスよく向上させるために、心身機能、活動、参加の3つの要素を含めて設定します。具体的には、利用者が住み慣れた地域で可能な限り自立した生活を続けられるように、単に座る・立つ・歩くといった身体機能の向上を目指すことのみを目標とするのではなく、居宅における生活行為(トイレに行く、自宅の風呂に一人で入る、料理を作る、掃除・洗濯をする等)や地域における社会的関係の維持に関する行為(商店街に買い物に行く、囲碁教室に行く、孫とメールの交換をする、インターネットで手続きをする等)等、具体的な生活上の行為の達成を含めた目標とすることを目指します。
短期目標の設定
長期目標を達成するために必要な行為を細分化し、短期目標として設定します。例えば、長期目標が「スーパーマーケットに食材を買いに行く」の場合、以下の行為を短期目標として設定します。
- 買いたい物のリストを作る
- スーパーマーケットまでの道順を確認する
- スーパーマーケット内でリストの食材を見つける
- レジで支払いをする
個別機能訓練項目の設定
短期目標を達成するために必要な行為を検討し、利用者の心身機能に照らし合わせて訓練項目を設定します。例えば、歩行機能が低下している場合、歩行機能を向上させる訓練や福祉用具の使用訓練を行います。また、訓練項目は利用者の生活意欲を向上させるものであるべきです。
利用者および家族への説明と同意
機能訓練指導員は、利用者およびその家族に対して個別機能訓練の内容を分かりやすく説明し、同意を得ます。この際、個別機能訓練計画書を交付(電子的記録の提供を含む)します。
介護支援専門員への報告
介護支援専門員には、個別機能訓練計画書を交付し(電子的記録の提供を含む)、利用者およびその家族への説明と同意を得た旨を報告します。
個別機能訓練の実施体制
個別もしくは小集団での訓練
個別機能訓練は、類似の目標を持ち、同様の訓練項目を選択した最大5人までの小集団(個別対応を含む)に対して行います。機能訓練指導員が直接訓練を行い、その補助として看護職員、介護職員、生活相談員、その他の職種の人が関与することは問題ありません。
実際的な行動を反復する訓練
個別機能訓練の目標が具体的な生活行為の達成である場合、実際の行動やそれを模した行動を反復することで、段階的に目標の行動ができるようにします。事業所内で行う場合は、実践的訓練に必要な浴室設備や調理設備・備品を備え、事業所外では利用者の居宅や近隣の施設などで訓練を行うことが望ましいです。
訓練時間の設定
個別機能訓練計画に定めた訓練項目の実施に必要な1回あたりの訓練時間を考慮し、適切に設定します。
訓練実施回数
個別機能訓練の目的を達成するためには、生活機能の維持・向上を図る観点から、計画的かつ継続的に訓練を実施する必要があります。目安として、おおむね週1回以上の実施が推奨されます。
個別機能訓練実施後の対応(評価・報告)
訓練の評価
個別機能訓練を開始した後は、その目的に照らして、訓練項目や訓練時間が適切だったか、訓練の効果が現れているか(例:利用者のADLやIADLの改善状況)を評価します。
居宅訪問と生活状況の確認
3ヶ月ごとに一度以上、利用者の居宅を訪問し、生活状況(起居動作、ADL、IADLなど)を確認します。また、利用者やその家族に対して、訓練の実施状況や効果を説明し、記録します。この説明や記録は、訪問日とは別の日にICTなどを活用して行うことも可能です。
介護支援専門員への報告と相談
3ヶ月ごとに一度以上、訓練の実施状況や効果について、介護支援専門員などに報告・相談します。利用者やその家族の意向を確認し、訓練の効果をふまえて、目標の見直しや訓練項目の変更を行います。
これらの対応を通じて、利用者の個別機能訓練が継続的に適切に行われるように努めます。