機能訓練・運動の中止基準とは?アンダーソン・土肥の基準と日本リハビリテーション医学会ガイドラインを実務の流れで解説

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通所介護(デイサービス)用、全体像とポイントがわかる!

こんなお悩みありませんか?
そんなとき、この教材がお役に立つと思います。
「今日このご利用者、マシントレーニングやっていいのかな」
「訓練中に息切れが出てきた、止めた方がいいか」
通所介護の現場では、こういう判断を毎日しています。
明確な基準なしで「なんとなく」「今まで大丈夫だったから」で判断していると、もし急変が起きたとき「なぜ続けたか」を説明できなくなります。逆に、中止基準を頭に入れておけば、判断の根拠が生まれます。
この記事では、機能訓練指導員として使える中止基準「アンダーソン・土肥の基準」と「日本リハビリテーション医学会のガイドライン」を、実際の業務の流れに沿って説明します。
理学療法士・作業療法士だけでなく、柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師・看護師兼務の方や、管理者・施設長の方にもわかるよう整理しました。
中止基準の詳細は、以下の記事が参考になります。
リハビリ・運動の中止基準とは?アンダーソン・土肥の基準と日本リハビリテーション医学会ガイドラインによる中止の判断目安
中止基準は3段階で考える
中止の判断は「訓練前」「訓練中」「様子見」の3段階があります。それぞれで見るべき項目が違います。
| タイミング | 判断の内容 |
|---|---|
| 訓練前(開始判断) | 今日は積極的な訓練をしない方がよい状態か |
| 訓練中(中止判断) | 今すぐ止めなければならない変化が出ていないか |
| 一時中止(再開判断) | 休んで回復すれば続けられるか、それとも今日は終了か |
実務の流れで見る中止基準の使い方
ステップ1 訓練前のバイタルチェック(開始の判断)
通所介護では来所時にバイタルチェックをしている事業所が多いと思います。このタイミングで以下の状態があれば、その日の積極的な機能訓練・マシントレーニングは行わないと判断します。
以下は日本リハビリテーション医学会ガイドライン(「リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン」)に示された基準です。
| 項目 | 積極的な訓練を行わない目安 |
|---|---|
| 脈拍 | 40拍/分以下 または 120拍/分以上 |
| 収縮期血圧 | 70mmHg以下 または 200mmHg以上 |
| 拡張期血圧 | 120mmHg以上 |
| 体温 | 38度以上 |
| SpO2(酸素飽和度) | 90%以下 |
| 自覚症状 | すでに動悸・息切れ・胸痛がある、座位でめまい・冷や汗・嘔気がある |
| 心疾患関連 | 労作性狭心症の方、心筋梗塞発症直後で循環動態が不良な場合、著しい不整脈(心房細動で著しい徐脈または頻脈を含む) |
バイタルが基準内であっても、「いつもと違う」「顔色が悪い」「昨日から体調が悪いと言っていた」という変化があれば、訓練を控えるか負荷を落とす判断も必要です。数値だけでなく、その人の普段の状態との比較が重要です。
また、以下のような状態も訓練前に確認しておきたい「注意が必要な場合」としてガイドラインに挙げられています。これらがある場合は負荷を控えめにするなどの配慮をします。
ステップ2 訓練中の観察(中止の判断)
マシントレーニングやストレッチ・体操などの訓練中に以下の変化が出た場合は直ちに中止します。
以下はアンダーソン・土肥の基準とガイドラインを合わせた中止の目安です。
| 項目 | 訓練を直ちに中止する目安 |
|---|---|
| 脈拍 | 140拍/分を超えた、または徐脈が出現した |
| 不整脈 | 1分間10個以上の期外収縮、または頻脈性不整脈(心房細動・上室性・心室性頻脈など)が出現 |
| 血圧変動 | 収縮期血圧が40mmHg以上上昇、または拡張期血圧が20mmHg以上上昇 |
| 呼吸 | 中等度以上の呼吸困難、頻呼吸(30回/分以上)や息切れが出現 |
| 自覚症状 | めまい、嘔気、狭心痛、頭痛、強い疲労感などが出現 |
| 意識 | 意識状態の悪化(ぼんやりする、呼びかけへの反応が鈍くなるなど) |
マシントレーニングでは「一人で黙々とやっていて気づかなかった」という状況が起きやすいです。定期的に声をかけて自覚症状を確認すること、顔色・表情・呼吸の変化を観察することが現場での実践的なリスク管理になります。
ステップ3 一時中止して様子をみる(再開の判断)
直ちに止めるほどではないが、少し休んだ方がよい場合です。以下の状態が出たら一時中止して安静にし、回復を確認してから再開するかどうかを判断します。
| 状態 | 対応 |
|---|---|
| 脈拍が120拍/分を超えた | 一時中止・安静。回復を確認して再開 |
| 脈拍が運動前の30%を超えて増加した | 一時中止。2分安静で10%以下に戻らなければ訓練終了か極めて軽い内容に変更 |
| 1分間10回以下の期外収縮が出現した | 一時中止・様子観察 |
| 軽い動悸・息切れを訴えた | 一時中止・安静。回復を確認して再開 |
中止・開始判断の根拠「アンダーソン・土肥の基準」とは
アンダーソン・土肥の基準は、リハビリテーション医学の世界で長年使われてきた運動中止の共通認識で、上記の3段階の枠組みの元になっています。以下に原文に近い形でまとめます。
Ⅰ.運動を行わない方がよい場合
Ⅱ.途中で運動を中止する場合
Ⅲ.一時中止し、回復を待って再開する場合
「マシントレーニングくらい大丈夫」と思わないために
デイサービスの現場では、マシントレーニング・ストレッチ・体操・歩行訓練などを柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師、介護職員などが担当することもあります。「マシントレーニングくらいなら大したリスクはないだろう」と思ってしまうと、怖いことになりかねません。
アンダーソン・土肥の基準はもともと一般人に当てはめた基準です。通所介護に来られる高齢の利用者は、基礎疾患・服薬・体力低下が重なっていることが多く、健常な若い人と同じ感覚で考えてはいけません。
特に注意が必要なのは以下のような方です。
機能訓練指導員に医師の指示書は必要か
通所介護の機能訓練は、医師の指示書がなくても実施できます。ただし、高リスクな利用者(心疾患・呼吸器疾患など)に対しては、主治医に事前に「この方への運動負荷量の目安や禁忌事項」を確認しておくことが現場の安全につながります。
急変時は医師・看護師へ連絡し、指示を仰ぎます。日頃から連携ルートと急変時の対応方法を確認しておくことも機能訓練指導員のリスク管理の一部です。
中止・実施の記録を残す
中止基準に基づいて訓練を見合わせた場合や、訓練中に中止した場合は、その理由と状態を記録に残すことが重要です。「血圧が高かったため本日のマシントレーニングは中止、安静を保ち経過観察を行った」「訓練中に脈拍が120を超えたため一時中止、安静後に回復を確認して訓練を終了した」というように、バイタルの数値と判断の根拠を記録しておきましょう。
記録が残っていることで、万一の際にも「適切に判断した」ということを示すことができます。
まとめ 訓練前・訓練中・一時中止の3段階で
| 場面 | 判断の目安 |
|---|---|
| 訓練前(開始しない) | 脈拍40以下または120以上、収縮期血圧70以下または200以上、拡張期血圧120以上、SpO2 90%以下、体温38度以上、安静時の動悸・息切れ・胸痛・めまい・嘔気 |
| 訓練中(直ちに中止) | 脈拍140超、徐脈出現、期外収縮10個以上/分または頻脈性不整脈、収縮期血圧40mmHg以上上昇または拡張期血圧20mmHg以上上昇、頻呼吸(30回/分以上)、中等度以上の呼吸困難・めまい・嘔気・胸痛・強い疲労感、意識の悪化 |
| 一時中止・様子観察 | 脈拍120超、運動前比30%超増加(2分安静で回復しなければ終了)、期外収縮10個以下/分、軽い動悸・息切れ |
中止基準は「禁止のルール」ではなく「安全にリハを続けるための判断ツール」です。数値を覚えることより、「この人の今日の状態でこの訓練をしていいか」を毎回考える習慣が、現場の事故防止の本質です。

